アメリカ進出の第一歩となった意欲作だが…
1.DON’T COME TO CLOSE
2.DANCE THE NIGHT AWAY
3.PRETTY WOMAN
4.LOVE THAT WAS LOST(抱かれたい、もう一度)
5.CAN’T YOU SEE
6.WANT YOU
7.SUGAR DADDY
8.THE RIDE
9.KOKORO(Instrumantal)
プロデュース ボビー・ラカインド&ポール・バレア
作詞 ボビー・ラカインド&ポール・バレア 全曲
作曲 ボビー・ラカインド&ポール・バレア 1.9
矢沢永吉 2.3.4.5.6.7.8
矢沢ファミリーを解散して活動拠点を日本からアメリカに移し最初にリリースされたのが本作【YAZAWA】であるが、このアルバムを当時、リアルタイムで聴いたファンは、かなり戸惑ったのではないだろうか?
何故なら本作はソニー時代に培った要素が限りなくゼロに等しく、一聴した限りでは全く違うアーティストのレコードを聴いてる様な印象を受けるからだ。
これまでと何もかもが変わり、変わらないのは永ちゃんだけなのだから、それも当然かもしれないが、ただ、その肝心の永ちゃんのヴォーカルが、ここに来て先祖返りをしている点が、その印象を更に強くしている様にも思える。
これに関しては後に改めて触れるとして、次にサウンド面についてだが、当時、日本でも流行っていた、いわゆるウエストコースト系の明るくポップでキャッチーなスタイルは、それまでの永ちゃんの音楽性とはガラリと変わり、それを担っているのがボビー・ラカインドやポール・バレア(昔はバレルと表記されていた)等、ドゥービー・ブラザーズやリトル・フィート等のメンバー達である。
アメリカの一流ミュージシャンによる、その洗練された本場のサウンドとアレンジは見事の一言に尽きるのだが、その仕事は良くも悪くもプロフェッショナルのそれなのだ。
つまり、完全に「仕事」と割り切った物で、かつての、矢沢ファミリーの時の様な、有る意味、渡米前の永ちゃんの音楽性において最大の魅力とも言えた危うい程のスリリングさやパッションは、ここには無い。
これも、盟友達と共に創り上げてきたソニー時代と違い完全な職業ミュージシャン達との共演なのだから当然の事なのだが、これが結果的に先に書いた「先祖返り」に繋がるのではなかろうか。
前作、KAVACHで永ちゃんのヴォーカルスタイルは一応、完成したと書いたが、このアルバムには、その要素は完全に無くなりファーストアルバムの時の様に「軽い」歌声に成っている。
恐らく、これまでの演歌ロック唱法は新サウンドには合わないと判断したのだろうが、それが永ちゃん本人の判断なのかプロデューサーの意向だったのかは判らない。
ただ、その判断はサウンド面に関しては正しかったとも思える。
また、これが最も今迄と違う点だが、全編、英語歌詞である事も永ちゃんの唄を軽くしている要因なのは想像に難しくない。
というのも、この頃の永ちゃんは、まだ本当の意味で英語に慣れていなかった為に、唄よりもネイティヴな発音に近付けようという意識の方に比重が向いてしまっているのが声からも伝わってきてしまっているのだ。
故に、本アルバムに限っては永ちゃんの唄は「仏造って魂入れず」状態だと言わざる負えない。
しかし、この経験が有ったからこそ後の名作、名盤の誕生に繋がる訳だから、それ等を理由に本作を駄作という気は毛頭無い。
言うなれば、このアルバムは80年代のE.YAZAWAのスタイルを確立する上で必要かつ重要な通過点だった事は後のアルバムを聴けば明白である。
それを理解した上で改めて聴いてみると違った楽しみ方が出来たりする。
序でに、実現する事は無いだろうが、このアルバムをVoだけ今の永ちゃんが再録したら面白いんじゃないだろうか?
- ファンのマストアイテム度 4
- 一般的オススメ度 2
- 個人的評価 3
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